多焦点音場再構成

Author: Shun Suzuki

Date: 2024-01-09


本節では, Holo Gainの実装, すなわち, フェーズドアレーを用いた多焦点の音像の再構成手法について述べる.

なお, 本文章では,

  1. 各振動子の特性は同一
  2. 非線形項は無視できる, すなわち, 音場は個々の振動子が放出したものの重ね合わせになる

という事を仮定する.

定式化

問題の定義は以下となる.

点の焦点における音圧の振幅が与えられたとき, これを出力するような個の振動子の振幅と位相, すなわち, を満たすを求めたい. ただし, 振動子の出力には上限があり, を満たす.」

ここで, は伝達行列であり, 例えば, 障害物のない状態の球面波を仮定すると, である. また, は波数, は振動子の位置である. なお, 振動項はすべての振動子で同一と仮定したので無視する.

Sさらに指向性と空気による吸収項を考慮して とするモデル化もあるが, 本章の議論は本質的にの要素の表記に依らない.

複素数への拡張: 焦点の位相の導入

焦点における複素音圧の位相をとすると, 上式はまとめて と書ける.

一般的に, 超音波フェーズドアレーによる触覚提示や音響浮遊において, この位相は重要でない. 例えば, の超音波で考えると, 2つの焦点が同位相で振動していたとしても, 逆位相 (すなわち, のずれ)で振動していたとしても, ヒトの触覚は区別できない. したがって, に加えて, 焦点の位相にも自由度がある.

以下に, この問題の解法をいくつかの分類に分けて論じていく. なお, この分類は筆者の恣意的なものである.