音響放射圧
一般的に, 音波はそれが伝搬する媒質に置かれた物体に定常的な力を与える. これを放射圧 (Radiation Pressure) と呼ぶ. 一般的に, 放射圧はRayleigh放射圧とLangevin放射圧に分類される. 前者はある容器内に閉じ込められた音波が壁にもたらす放射圧である. 一方, 後者は自由空間に置かれた物体に作用する放射圧である. 例えば, 音響浮遊や触覚提示では後者の状況を考えるので, 本稿は後者の放射圧のみ扱うこととする.
音響放射圧の説明には, 平均エネルギー密度を用いたものがあるが, ここでは流体力学の観点から説明する. 平均エネルギー密度による説明は文献1などに詳しい (なお, 平均エネルギー密度による説明は, 音場が平面波に分解できるときのみ成り立つことが指摘されている2). 本文章の議論は3, 4, 5に基づく. 一部, 個人的な解釈を入れるので, 原論文と読み比べながら読むことを勧める.
圧力を
また, 連続方程式は
と表される. さらに, 音波の伝播は熱の伝搬より圧倒的に早く, 断熱的であると仮定する7. したがって, 熱力学の結果より, 音圧は密度のみの関数となり8,
と表される.
ここで,
から
となる.
ここで
一般的な流体の場合は,
と表記する.
まず, 粒子速度の大きさ
この
ここで, 音響マッハ数が
と表す10.
この時,
でとなる.
これらを, オイラー方程式と連続方程式に代入すると,
及び,
となる.
これより, まず0次の式として,
を得る. ここで,
なので
次に一次の式として,
を得る. 上2式より,
を得る.
これらは所謂波動方程式であり,
最後に, 2次の式として,
を得る.
さて, 式(1), (2)を音圧の表示にすると,
となる.
ここで, 渦なしの場を仮定し, 次の速度ポテンシャルを導入する.
すると, 式(3), (4)はそれぞれ
となり,
を得る.
したがって, ある物体
となる11.
まず, 一次の項は, 線形の波動方程式に従うので,
となる.
一般の場合, ある物体
無限剛壁と平面波の場合
Section titled “無限剛壁と平面波の場合”ここでは,
音響放射力の剛壁に垂直な方向の成分
となる.
この被被積分項を音響放射圧
波が角度
とする.
ここで,
この時,
より,
となる.
なお,
なので,
と表すことができる.
ここで,
Footnotes
Section titled “Footnotes”-
実吉純一, “超音波技術便覧”, 日刊工業新聞社, 1978. ↩
-
長谷川高陽, “ランジュバン放射圧に関する統一理論”, 日本音響学会誌, 1996. ↩
-
Eckart, Carl. “Vortices and streams caused by sound waves.” Physical review 73.1 (1948): 68. ↩
-
Awatani, Jobu. “Studies on acoustic radiation pressure. I.(General considerations).” The Journal of the Acoustical Society of America 27.2 (1955): 278-281. ↩
-
Hasegawa, Takahi, et al. “A general theory of Rayleigh and Langevin radiation pressures.” Acoustical Science and Technology 21.3 (2000): 145-152. ↩
-
粘性なしのナビエ・ストークス方程式. また, ここでは外力場も考えていない. ↩
-
別の言い方をすると等エントロピーを仮定する. ↩
-
このような流体をバロトロピー流体 (barotropic fluid) と呼ぶ. ↩
-
この仮定の妥当性は後に示される. ↩
なので, は存在しない. ↩ は大気圧にあたり, これによる力は音響放射力とは呼ばない. なお, 定数なのでそもそも閉じた領域で積分すれば消滅する. ↩-
方向によるので正確には圧力ではない. ↩